めざすもの

 「わたしたちのめざすもの(以下;めざすもの)」は、さつき福祉会の基本的理念であり、社会情勢等に左右されることなく、大切に守っていくべきものです。
 「めざすもの」は、運営方針、事業計画、支援目標などを考える時の土台となります。常に立ち返り、理念を形にする努力が求められます。

①社会福祉法人さつき福祉会のはじまり
 吹田市での作業所づくり運動は、在宅の障害のある人や養護学校卒業生の『私たちも働きたい、話合える友達が欲しい』という願いに応え、1975年から始まりました。「吹田市手をつなぐ親の会」と「吹田市肢体不自由児・者父母の会」の両会を基礎組織として、地域住民の方々 の応援をうけながらのスタートでした。1977年には全国の共同作業所づくり運動がひとつになって、「きょうされん(旧;共同作業所全国連絡会)」が発足し、その発展にも寄与してきました。

 1982年11月「社会福祉法人さつき福祉会」として認可を受け、1983年1月から、知的障害者通所授産施設「さつき障害者作業所」を開所し運営を始めました。共同作業所開所にあたって、わたしたちは次の5点について確認しました。(※1982年の開所当時の確認点です)①どんなに障害が重くても受け入れる②障害の種別を問わない③年限をきらない④発達を保障することを実践の基軸とする⑤学校卒業後の受け入れる場づくりの運動を続ける 以上5点は、共同作業所作りの原点であり、今もこのねがいは、引き継がれています。

②施設づくりと事業展開をめざして
 30数年を経た今日では、障害のある人や共同作業所に対する『障害の種別を問わない』『障害の重い人たちに手厚い支援を』『利用年限を設けない』などの考え方は、制度上も一定の広がりを持つようになってきました。さつき福祉会は、これからも障害のある人の生きがいと働きがいを追及し、発達保障の観点に基づいた実践と利用者のねがいに沿った施設づくり、事業を実現するために運動を続けていきます。

 さつき福祉会の事業は、労働を日中活動の中心にした実践から始まり、30年たった今日、医療的ケアを必要とする人まで含めた日中活動を保障しています。更に24時間の暮らしを支える『生活の場』や『地域生活支援』を行い、支援対象も児童から高齢者へと広がってきました。今後も障害のある人の権利が保障され、住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるように事業展開していきます。また、障害のある人の暮らしは、個人や施設だけでは守ることができません。専門家との連携を大切にし、より充実した支援をめざしていきます。

③障害のある人の権利を守る運動
 日本における社会福祉・社会保障制度は、常に国民要求の高まりと運動の推進により勝ち取られてきた歴史があります。

 1970年代には、全国に革新自治体が誕生し、憲法を暮らしに生かした地方政治のもとで、社会福祉・社会保障制度が拡充され、国の制度拡充にも大きく影響を及ぼてきました。

 1980年代以降は、臨調行革路線による福祉予算の抑制が始まり、90年代には新自由主義にもとづく構造改革が具体化されはじめ、小泉政権の登場で一気に進められました。

 こうしたもとで、「貧困と格差」が社会問題になるなど、国民のくらしが破壊されてきました。

 障害者分野では、2003年の利用契約制度、2006年の障害者自立支援法で構造改革が具体化され、障害のある人や家族、関係者に深刻な影響を及ぼしています。

 しかし、こうした厳しい状況のもとで、障害者関係団体は、これまで実現しなかった「共同・連帯」の運動を粘り強くすすめ、理念や考え方の違いを乗り越えた「一致点」での運動へと大きく発展しました。

 2009年8月に行われた総選挙では、構造改革を推進してきた自民党政治に代わり、民主党を中心とした連立政権が誕生。国民の選択による「政権交代」が行われました。

障害者自立支援法については、単に廃止するだけでなく、日本国憲法にうたわれた障害のある人の「権利」を公的責任により保障することができる法制度を構築していくことが課題です。

 2006年12月、国連で「障害のある人の権利条約(Convention on the Rights of Persons with Disabilities)」が採択され、2007年5月に発効しました。

 一般に保障されている権利を「障害を理由」に保障しないことを「差別」とし、「必要かつ適当な変更及び調整」を「合理的配慮(Reasonable accommodation)」として締約国の責務と位置付けられた条約は、障害のある人の「権利保障」の国際最低基準であり、批准の際にはそれに見合った法制度の整備が求められます。

 さつき福祉会は、障害者福祉をはじめとする社会福祉・社会保障の充実と発展をめざし、すべての国民の「権利」の保障を求める事業体であり運動体です。

 わたしたちは、利用者・家族・職員、そして地域住民の豊かな暮らしと権利保障の実現をめざします。

 日本国憲法の理念の実現と国連・障害のある人の権利条約に沿った、人しての尊厳が守られ、人を大切にする社会づくりのために、2002年に策定したさつき福祉会の「めざすもの」の一部を修正します。

めざすもの1:私たちは、障害のある人たちを主人公として、発達と権利保障を大切にした実践をめざします。
 障害があるということを理由に、人として豊かに生活する権利の具体化が長らく放置されてきました。私たちは、人としてより豊かな暮らしができるように、あらゆる権利を保障する実践を進めていきます。どんなに障害が重くても、すべての人間は同じ発達の道筋をたどります。一人ひとりの発達要求に基づき、人生の主人公となれるよう働きかけ、ともに育ち合える実践を大切にしていきます。

 日々の実践の中でも労働保障は大切な柱です。どんな障害のある人でも、その人にふさわしい働く場を作り、社会参加できるように取り組みます。そして、一人ひとりの生活が守られ、より豊かに生きていけるように関係機関や専門家との連携をとりながら、利用者個々人の実態と要求に基づいた暮らしを支えることのできる実践をめざします。

めざすもの2:私たち利用者・家族・職員は、対等・平等の関係を築き、それぞれが主体者になるため、民主的で開かれた運営をめざします。
 さつき福祉会は、利用者・家族・関係者の願いやその意見を反映できる運営組織を追求していき、互いの信頼のもとで、事業を作り上げ発展させていきます。それぞれが、さつき福祉会の一員であることの自覚と責任を持って、主体的に関わろうとする運営をめざします。利用者の自治会や家族会、職員及び関係者の共同と連帯が図れるような組織作りをすすめ、もっとも大切な「障害のある人の発達と権利の保障」という共通の目標に向かい、意見を尊重しあった運営を行います。

めざすもの3:私たちは、障害のある人たちの要求実現に向けた事業の発展と地域に開かれた施設づくりをめざします。
 私たちは、これまでも共同作業所づくりから始まり、障害のある人たちの要求・願いに応える事業づくりを進めてきました。そして、事業の裏付けとなる制度づくりについても、実践を理論化し、その必要性を明らかにすることで、具体化をすすめてきました。

  また、こうしてつくった事業は、単に利用する人たちだけのものでなく、地域の障害のある人や地域住民に開かれたものにしていくことを大切にし、地域の社会資源としての役割を果たすことをめざしています。

  事業展開を考えるにあたっては、障害のある人それぞれが望む、自分らしい生活を実現できることを目標とします。住み慣れた地域で安心して暮らし続けるための支援のあり方を追求し、具体化していきます。

めざすもの4:私たちは障害のある人が安心して住める町を、地域住民とともにつくり、発展させることをめざします。
 障害のある人が暮らしやすい町は、こどもから高齢者まで誰もが暮らしやすい町にほかなりません。さつき福祉会の各施設を拠点として、地域とのつながりを豊かに広げ、地域福祉を充実し、誰もが安心して暮らすことができる地域づくりをめざします。

 吹田は長年の市民本位の市政のもとで、住民運動が豊かに発展・活動し、「福祉の吹田」「子育てするなら吹田」と呼ばれる暮らしやすい町をつくった歴史を持っています。

 地域住民とともにさまざまな運動や活動にも積極的に参加しながら、機会あるごとに社会福祉の問題を市民に訴え、理解と共感を広げていくことが大切です。

めざすもの5:私たちは、公的に福祉が保障されることを願い、一人ひとりの人間が大切にされる、平和で民主的な社会の発展をめざします。
 国連「障害のある人の権利条約」では、障害を理由とした差別を禁止し、障害のある人の実質的な平等と権利保障を締約国の責務と位置付けています。

 私たちは、日本においても権利条約の理念である真の平等と安心して暮らすことのできる社会が実現するように求めていきます。

 また個人の尊厳と権利が保障される社会は平和な社会であることが必要です。戦争は、個人の尊厳をないがしろにし、私たちの暮らしを破壊するとともに、新たな障害のある人を生み出す愚行です。

 日本国憲法第9条は、日本の戦争放棄と平和主義を明言しています。私たちは、全ての人の権利が守られるよう、平和な社会を作り上げるために考え、行動していきます。

 私たちは、日本国憲法で保障されている生存権を具体化する「福祉」を公的責任により豊かに発展させていくことをめざして、多くの人と手をつないだ活動をすすめていきます。

                                        2010.4.1 確定文書